下ノ廊下、十字峡、奥鐘山と言う名が連なる。
そして、地形図一枚でカバーしきれない北に続く長い道に目が行く。
水力発電所やダムの建設調査の為に開掘された「旧日電歩道」(黒部ダム~仙人谷)
そして 「水平歩道」(仙人谷~欅平)だ。
美しい渓谷や険しい地形の写真を山が好きな人ならば、何度か雑誌などで目にしたことがあるはず。歩いたことのある友人に聞くと、やはり素晴らしい絶景が待っているとのこと。
一方で、その地域の自然の厳しさは筆舌し難い。以前ある雪山の机上講習で、初めて泡雪崩(ほうなだれ)を知りました。それは雪煙が時速200キロで流下し、コンクリート製の建物すら吹き飛ばすという恐ろしいもの。
その時耳にしたのが、吉村昭のノンフィクション小説「高熱隧道」。
ようやく手にとってみました。
黒部第三発電所建設に伴い作られたトンネルの工事現場での話。
そこに描かれていたのは・・・
岩をくり抜いて作った狭く厳しく険しい道
その横には落ちれば命の保証はない深い谷
そこを数10キロの建設資材担いでの歩荷
165度という高熱の地盤を掘り進む難工事
雪崩のリスクの存在する環境
それに伴い多くの尊い命が失われる現実・・・
その歴史を知ると、また別の思いに包まれます。
やはり黒部渓谷は、心して入るべきエリアだとつくづく感じた一冊でした。